No.243「祖母の風炉釜」
〜コラム 〜
No.243「祖母の風炉釜」
友達が家に遊びに来た時などに、お抹茶を点てて出すことがあります。普段お抹茶を頂く機会のない方だと、とても喜んでいただけます。
お抹茶を点てる時に使うお湯は、台所のIHヒーターに釜を置いて沸かしています。この時に使っているのが、祖母が使っていた風炉釜の釜です。風炉から外して釜のみを使っているのですが、小ぶりで使いやすいのでとても重宝しています。それに、やはり鉄のお釜で沸かしたお湯で点てるほうが冷めにくく、おいしいと感じます。
この風炉釜は祖母の娘時代に使っていたものだそうなのですが、母から聞いた話によると、祖母はそこそこのお嬢様だったらしく、お茶道具を持っていたそうです。祖母の娘時代というと、戦前の時代です。私は中学生から茶道を始めたのですが、祖母がそれなら、と祖母の家の物置に眠っている茶道具を出してくれることになり、中学生の時に祖母と一緒に2人でホコリまみれになりながら物置で捜索して、やっと見つけました。風炉釜と一緒に草花の描かれた水指も出てきました。宝さがしみたいでとても楽しくて、見つけた時は本当にうれしかったです。
出してきた時の風炉釜は錆びだらけで、とても使える状態ではありませんでしたが、祖母が何度も何度もお茶を煮出して使えるようにしてくれました。祖母がお茶を台所で煮出している後ろ姿は今でも覚えています。
祖母が亡くなってもう10年ほど経ちますが、その釜を使う度に、孫のためにと釜を探してくれて、使えるようにしてくれた祖母の優しさを思い出し、温かい気持ちになります。これからも大事に使っていきたいです。