No.225 「2冊の本」
〜コラム 〜
No.225 「2冊の本」
私には茶道について影響を受けた2冊の本があります。
1冊目は岡倉覚三『茶の本』
この本は私が茶道を始めるきっかけとなった本です。
25歳の時、当時よく読んでいた数学者の本にこの『茶の本』が紹介されており、読んでみようと思いました。
『茶の本』は、原文は英語で書かれており、海外に日本の茶道を紹介するために、
海外と日本の芸術感や文化の対比がされていて面白いです。
この本を読んで、茶道の情緒や芸術性に惹かれて茶道を始めようと決めたのでした。
当時私はバンドを組んでいたので、エレキギターを担いでシルバーアクセサリーを着けて先生の前に現れた時には、先生から冷やかしかと思われたかもしれません。懐かしい思い出です。
2冊目は久松真一『茶道の哲学』
この本は私が茶道を深めるきっかけとなった本です。
日本における茶道文化が本来どのようにあるべきか、茶道を志す人々がどういう姿勢で茶道に取り組むべきかが書かれています。
この本の中に「茶道箴」という言葉が載っています。いわば茶道の心構えです。
裏千家の「ことば」と同じようなもので、ただ「茶道箴」は一見ではかなり難しいことを言っているように見えるのですが『茶道の哲学』ではこの茶道箴の言葉一つ一つを分解して解説しているので本を読めば内容はわかるようになっています。
禅の教えや南方録に書かれている言葉から茶道の在り方を説いている本です。私はこの本を今でもことあるごとに読み返します。
それくらい私にはしっくりくる本でした。
せっかくなので「茶道箴」を以下に載せておきましょう。
初見では何を言っているのかわからないと思います(私はそうでした笑)。
『茶道箴』
吾等今幸いに露地草庵に入って 茶道の玄旨(げんし)に参じ
和敬清寂の法を修することを得(う) 願はくは前賢古聖(こしょう)の芳躅(ほうしょく)を攀(よ)じ 苛且(かりそめ)にも遊戯逸楽に流れ
好事驕奢(こうずきょうしゃ)に趨(はし)り
流儀技芸に偏固して邪路に堕する事勿(な)く 堅く侘数寄の真諦(しんたい)を把住(はじゅう)し
専(もっぱ)ら心悟(しんご)を旨(むね)とし 一期一会を観じて道業倦(う)むこと無く
事理(じり)双修(そうしゅう)し 挙止(こし)寂静(じゃくじょう)にして塵念を生ずること無く
事物人境に対(むか)って無念にして身心(しんじん)自ずから道に契(かな)い
山水草木草庵主客諸具法則規矩 共に只一箇に打擲(たてき)し去り
皆倶(とも)に無事安心一様(あんじんいちよう)の白露地(びゃくろじ)を現成(げんじょう)し
茶の十徳を以て世を饒益(にょうやく)せんことを