No.220 「きっかけ」
〜コラム 〜
No.220 「きっかけ」
誰しもが茶道を始めるにあたって何かしらのきっかけがあったと思いますが、私のきっかけを思い出しながら書いてみたいと思います。
茶道との最初の出会いは私が高校3年生の時、仲が良かった友達が茶道部に入っていて部室に遊びに行った時のことでした。当時、他校との交流行事でお茶会があるという事を聞き、興味を持った私は少しの期間ではあるけれど茶道部に入部する事にしました。その交流行事では大寄せの茶会に参加したのですが、全く知識のない状態だったので今でもどのようにその場を過ごしていたのだろうと不思議に思っています。そして、その交流行事の後すぐに3年生は卒業であったため、茶道部に入っていた事すらも忘れて数年を過ごす事になります。そんな私がなぜ本格的に茶道を始める事になったのか…
高校を卒業し大学生になった私は、大学に茶道部があることも知らずに過ごしていました。そんな中、卒業間近に海外の大学に短期留学することになり、そこでの経験が私を茶道へと導いてくれる事になります。留学先の大学で日本文化についてのプレゼンをしなければならない授業があった時のことです。何を調べて発表したら良いか悩んでいた私は、その時に現地の学生が発表している様子を見て、日本人の私よりも日本の文化について興味を持ち、よく知っているという事に何とも言えない気持ちになりました。私も日本に帰ったら何か一つでも日本の伝統文化を勉強しようと思ったのでした。そんな時、日本から一緒に来たルームメイトの後輩が、日本から抹茶と茶筅が送られて来たので一緒にお抹茶飲みましょうと誘ってくれました。輸送中に抹茶茶碗が割れてしまっていたので代わりに現地で探して買ったプラスチックのカフェオレボウルで飲んだお抹茶はとっても美味しく、なんだか日本に戻ってきたようなホッとした気持ちにさせてくれました。現地の友達も初めて見る抹茶に興味津々で、苔の沼みたいだと言って嫌そうな顔をした子が、一口飲んだ瞬間に目をキラキラっとさせました。「うん、美味しい」と言って飲み干した姿を見てとても嬉しい気持ちになり、日本に帰ったら茶道をしようと決めて、私は帰国しました。
海外に出て日本の事をよく知らない事を実感し日本の伝統文化に興味を持つというのはよくある話だと思いますが、私もそのよくある中の一人となったわけです。ありきたりのきっかけではあったかなと自分自身でも思ってはいますが、今も続け、これからも続けるであろう茶道と出会えたことは海外に出て得た大きな収穫だなと感じています。