No.163「寒鰤」
〜コラム 〜
コラムNo.163 「寒鰤」
2019年の冬だったと思うのだが、当時2歳の姪がハンモックの中から「かんぶり」と楽しそうに話しかけてくる。一体何の事を言っているのか分からなかったが、楽しそうにしていたので「かんぶり」とやらに付き合ってあげた。ひたすらハンモックを揺らし「かんぶり」と叫ぶという大人にとっては苦行以外の何物でもないこの遊びはなかなか終わらず凄く疲れた事を2年後の今でも覚えている。
今こうして文字にすると「かんぶり」は「寒鰤」のことでハンモックは網で私は漁に付き合わされていたのだなと理解できるが、大して興味がない状況からだと気が付けない。この寒鰤エピソードに限らず、気づきがなければそのまま何もなく終わってしまう事は多い。
部長になると見えていなかった物が見えるようになるが、今まで見えていたものが見えなくなる。部長と言う立場が物事の優先順位を変えてしまうので、気になる事が今までと違ってしまう。部長を何期も務めているとある程度の結果を出さなくてはいけない焦りと目の前にある現実の重苦しさから仕方がないを積み重ねてしまい、仲間の気持ちを素通りしてしまったことが何度もあった。
今期は私にとって最後の部長だからとか、このコロナ禍をとか小難しく考えていた時、先生から総会のお軸は「楽在一碗中」はどうだろうと勧められる。色々取り組むべき問題はあるけれど、まずは一碗の中に在る楽しみを仲間と共有するのが青年部。先生に声を掛けてもらわなければ、最後にひと花咲かせますと頑張りすぎて大切なことを素通りしてしまうところだった。危ない、危ない。