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No.242「瀧」

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〜コラム 〜

No.242「瀧」


先日のお稽古場の床のお軸は「瀧」。
毎日暑い日が続く中、少しでも涼しさを感じられるようにと先生が掛けてくださいました。
清涼感を茶室に取り入れたいという想いから、暑い盛りの7月8月によく見かけるお軸です。
「瀧」のお軸には瀧の字の最後の一筆を、瀧が流れるようにスーッと長く書いたものが多く、勢いよく下に伸びている様子が、天からまっすぐに流れ落ちる滝の風景そのもの、まるで画賛のようです。
初めて瀧のお軸を拝見した時は、文字の力強さに、水が勢いよく流れ落ち、水しぶきが飛んでくるダイナミックな滝の様子が感じられ、その鮮烈な印象にしばらく目が離せませんでした。
壮大な滝のイメージが暑い夏にぴったりです。

この「瀧」のお軸は、初めて茶道を指導して下さった亡き師匠との思い出のお軸でもあります。
仕事帰りの木曜日、お稽古場で先生にご挨拶をして床を拝見すると「瀧」のお軸。そして聞こえてくる雨音。不思議と「瀧」のお軸の日はいつも雨なのです。
「今日も雨になりましたね」と先生と笑いあってからお稽古が始まります。
お茶室の静けさの中で雨音とお釜の音を聞きながらのご指導に、一日の忙しなさでざわついていた心が落ち着いてくるのを感じ、まるで滝の水と雨水とが雑念を洗い流してくれるようで心地よいお稽古の時間でした。
もう何年も前のことになってしまいましたが、今でも「瀧」のお軸を拝見すると、その頃のお稽古の雰囲気が懐かしく思い出されます。

今年も「瀧」のお軸を拝見できたことに感謝して、暑さに負けず、清らかな心で落ちついてお茶と向き合うことを心掛けたいと思います。




コラム瀧① コラム瀧②