No.55「道徳のじかん〜“ブシドーとチャドー”」
〜 コラム 〜
No.55「道徳のじかん〜“ブシドーとチャドー”」
「ほら、チョロチョロしないの!」
駅で母親が子供に言っているのを見ました。よくある光景ですね。
お子さんがいらっしゃる方は、一度は口にした言葉かもしれません。あるいは幼い頃ご自身が言われているかも。
最近知ったのですが、現在の小学校では「道徳」を授業として行う学校が少なくなっているようです。“道徳は、家で親が子供に教えていくもの”との考えかららしいです。
「宗教教育の無い日本でどうやって道徳教育を受けるのか?」とのベルギー人の質問から、一つ前の五千円に描かれていた人物、新渡戸稲造は著書「武士道」を書こうと決めたと言います。封建制度の日本人の観念が道徳と強く結びついていることに気がついたのです。
では現代の道徳とは何なのか?
考えてみますと、私たちが今学んでいる「茶道」はまさに道徳教育とも呼べるものではないでしょうか。実は「武士道」にも“茶の湯”の話は出てくるのですが、興味のある方は「武士道」を読んでみると面白いと思いますよ。
難しいことは置いておいて。
「(畳の上は)まっすぐ歩きなさい、フラフラしないのよ」
稽古場で先生がお弟子さんに言いました。冒頭の光景のようですね。
私たちは子供に言います。
「ほら、挨拶は?」
お茶の先生に言われます。
「お辞儀はしっかりと」
子供に言います。
「きちんと持ちなさい。ほら、こぼさない!」
先生に言われます。
「きちんと持ちなさい。はい、こぼさないように」
子供に言います。
「遊んだら片付けなさい!」
先生に言われます。
「出したら有ったところに戻しなさい」
子供に言います。
「ちゃんと前を見なさい!」
先生に言われます。
「周りをよく見なさい」
挙げるとキリがないです、恥ずかしくなってきました。
その他に礼節や思いやりを茶道は教えてくれます。
そんな道徳としての「茶道」も私たちは学んでいるのですね。
成長しなければならないのは、子供達だけではないようです。