No.48「丁 宗鐵著 「正座と日本人」を読んで」
〜 部長コラム 〜
No.48「丁 宗鐵著 「正座と日本人」を読んで」
ようやく暑い夏から涼しい秋になり、気持ちが落ち着いてくる季節になりました。そんな秋の夜長、読書に耽るのも一興じゃないでしょうか?
今回、ご紹介させて頂くのは丁 宗鐵著 「正座と日本人」です。
著者丁 宗鐵さんは医学博士で日本薬科大学教授という医学畑の人がなぜ正座について書こうと思ったのでしょうか?
「膝を悪くして、私のクリニックを訪れる患者さんが大勢います。その少なからぬ人は茶道をたしなんで、正座をする機会の多い人たちです。私はその患者さんたちに『膝がよくなったら、どうしたいですか』と聞きます。すると、返ってくる答えは決まって、『また正座をして、お茶を楽しみたい』というもの。」正座を原因とする大勢の膝痛の患者に出会い、正座は本当に茶道に欠くことのできないものかという疑問から書かれた一冊。
正座以外の座り方、正座という言葉はいつ頃から登場し始めるのか?また、茶道にいつ頃から正座が取り入れられるのか?など興味深い内容が書かれていますが、Amazonレビューをよんでみると「部分から全体をいきなり結論付けるやり方が随所に見られ、読んでいて苦痛。」「著者は日本文化に触れた事が無いんでしょうか。正座が広まったのが明治以降であるとすれば、正座スタイルの寺子屋はまず存在しないですねぇ。」など厳しいコメントがあるものの私が読んでみた印象としては茶道習っている立場としては正座というものに対しては半信半疑でいたいと思いました。というのは、「茶道を行うときは正座でなければならない」という「信」は茶道が形骸化するような気がするし、かといって「昔は安座や立て膝をして点前をしていた時代もあったのだから正座に固執する必要はない」という「不信」もなにか面白味が感じられない。茶道をしている時、正座でいたほうが一番ミニマムに所作や立ち居振る舞いを行いやすく、また、正座をすることで自律神経の交感神経を刺激し、抹茶のカフェインで二重に交感神経を高ぶった時のあの高揚感は茶道特有のものではないでしょうか。
正座によって得られる心地よい緊張感もよいのですが、安座や立て膝または胡座で得られるリラックス感も大事です。つまり、私のいう半信半疑は緊張とリラックスのバランスがとれた状態で行うパフォーマンスが最良だと考えます。正座という「型」とこの本で得られた「知」によって、ハイブリッドな座法ができ、次世代にも受け継がれるような正座の「形」がつくられることに期待がもてる一冊です。