No.64「サボテンと茶道具」
〜 部長コラム 〜
部長コラムNo.64「サボテンと茶道具」
我が家には、存在すらも忘れられた小さなサボテンの鉢植えがある。
すっかり茶色くなって、何年もそこにある。
時々思い出したように水を与えるのだが、(植物なので当たり前だが)特に反応もなく、生きているのやら、どうなのやら。。
先日、ある用事で園芸店に立ち寄った。
そこで何故か、我が家のサボテンのことを思い出し、栄養をたっぷり含んでいるらしい植え替え用の土と、ちょっとおしゃれな鉢を購入した。家に帰り、さっそく引っ越し作業開始。古い土から抜いてみると、我が家のサボテンはすっかり根も短くなっており、無駄作業な気もしつつ、引っ越しは無事完了。
するとどうしたことか、数日経つとサボテンがどんどん緑色になり、
どう見ても生気が宿ってきた。今では新しい芽のようなものまで出てきている。さては土が良かったのだろうか。
そんなサボテンを眺めながらふと思う。野菜や草花は別として、はたしてこうした植物に寿命はあるのだとろうか、と。適度な水と、太陽と、風と、気温が整っていたらどうなのだろう。
仮に寿命があったとしても、きっと人間より長生きしそうな気がする。
こうした植物が枯れてしまうのは、きっと環境のせいなのだろう。
お茶道具も、同じかもしれない。
我々よりもずっと長生きで、寿命が来るとしたら、やはり環境が影響するのではないだろうか。
植物に適度な水や太陽が必要なように、お茶道具に適した環境とは何だろう。
それは箱に入れておくことではなく、もしかすると茶席に出されることなのかもしれない。
お茶を点てる場所で、そのお道具本来の場所に置かれることが、正しい環境なのかもしれない。
お茶道具はサボテンとは違い、いくらお茶席に出したところで新しく芽吹いたりはしないと思うが、
植物に生命力があるように、お茶道具だって何かがあると思いたい。
我が家にも箱に入ったままのお道具が幾つかあるが、皆さんのお宅にもないだろうか。
たまには箱から出して一時眺めるだけでも、もしかするとそのお道具は、
我が家のサボテンのように喜んでいるのかもしれません。