No.75「茶道とマインドフルネスにみる茶禅一味」
〜 部長コラム 〜
部長コラムNo.75「茶道とマインドフルネスにみる茶禅一味」
最近、耳にするマインドフルネスという言葉。マサチューセッツ大学医学大学院教授のジョン・カバット・ジンが開発した、禅からの思想などの宗教色を分離したメソッドがベースとなっている。
座禅の三要素、調身、調息、調心。マインドフルネスでは姿勢、呼吸、集中・観察となる。「今していることに注意を向ける」ことで感情の乱れをコントロールする手法と考えていいのかもしれません。
それは、私たちが行っている点前にも同じことがいえるのではないでしょうか。
点前の三要素は位置、順序、動作です。私たちがお点前を行っている時、「今」「ここ(here)」に集中しています。注意の向きをコントロールして、自分や他者の感情などに気づくことができるようになってきます。(主客一如)
例えばマインドフルネスの手法の一つに呼吸法があります。
1. 姿勢を正す。
2. 身体の感覚に意識を向ける。
3. 呼吸に注意を向ける。
これを五分から十分行う。呼吸を整えて瞑想をすると、脳の前頭前野や前帯状皮質と呼ばれる部分が元気になり、自己と他者への気づきが増える。さらに情動を司る脳の扁桃体の余計な興奮にブレーキがかかり、自己コントロール力が向上すると考えられている。
それは茶道にも同じことがいえるのではないでしょうか。例えば南方録の覚書の一節にも、「水を運び、薪をとり、湯をわかし、茶をたてて、仏にそなえ、人にもほどこし、吾ものむ。花をたて香をたく。」とあります。
これはマインドフルネス実践編「生活のなかのどこか小さい部分に働きかける。」
ということと共通していると思います。
つまり、意識や注意の向け方を変えることで思考や行動に変化を起こそうと働きかけるきっかけになるのでしょう。
このようにマインドフルネスというメソッドを用いて普段、私たちが茶道を行っている時、「茶禅一味」といわれる感覚を言語化してみました。