No.91「不白筆記釜」
〜 連載 学び舎〜
No.91「不白筆記釜」
10月4日は不白忌でしたので、川上不白とその著作『不白筆記』について紹介します。
〇 川上不白について
1719年、紀州生まれ。表千家7代如心斎のもとで茶の湯を学んだ後、江戸で千家茶道の普及に努め、現在まで続く江戸千家の祖となりました。
如心斎や裏千家8代又玄斎と共に七事式の制定に参画しました。
〇『不白筆記』について
『不白筆記』は不白が如心斎からの教えをまとめた書物です。一般に、若くして没した如心斎の嗣子啐啄斎のために書き残したとされていますが、『不白筆記』において執筆の目的は明らかにされておらず、詳細は不明です。
内容は点前や道具の扱いのみならず、七事式制定の経緯や茶道の思想についても触れられています。
最後に私が『不白筆記』の中で心に残った部分を一部紹介します。
茶の湯でない所が茶の湯なのだ、と師匠は常々言われていました。
→お稽古の時だけではなく、普段の生活からちゃんとしないといけないな、と思いました。
(七事式において)札に当たりにくい、空くじなどということはなく、私は十回に九回も当たったことがあります。(中略)こんな具合ですから客の立場になってもどきどきするものなのです。
→花月の際は油断してはいけませんね。
ことのほか遅めに風炉の名残りを師匠がされたことがあります。私も呼ばれて同席致したのですが、この時はなんということもない通り一遍の茶の湯でした。何をしたのでしょうか、よく覚えていませんが面白いということもなく、ただこころよく主客共に平常の通りに進んでいったのです。(中略)ほんとうによく本意にかなったといえる茶の湯は私の一生でもこの一会しか思い当たりません。
→正直、私はお客さんに面白いと感じてもらえる茶会をしたいと思っていたので、自分の認識の甘さを痛感しました。
最近現代語訳が出版されたので、興味のある方は『不白筆記』を是非読んでみてください。
参考文献
現代語訳 不白筆記, 谷 晃, 川原書店
チャート茶道史, 谷端 昭夫, 淡交社