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No.80「真・行・草について」

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〜 連載 学び舎〜

No.80「真・行・草について」



 先日札幌第三青年部主管で開催された子ども茶道教室では、マナー教室のコーナーを設け、日常生活でも役立つよう靴の脱ぎ方、正座とお辞儀の仕方、床の拝見の仕方を学んでいただきました。お辞儀の仕方として「真のお辞儀」「行のお辞儀」「草のお辞儀」の三種類があることはご存じかと思います。では「真」「行」「草」はどこからきたのでしょうか。

 真行草は、元は書の書体、真書(楷書)・行書・草書の総称です。中国の東晋時代に書道の基礎を作った王義之によって、古代の篆書・隷書に対して真・行・草の三体が確立したといわれています。日本では奈良時代に『真草千字文』とともに日本に入り、平安時代には書体筆法として定着しました。書道の普及とともに3段階の様式表現の用語として建築、華道、絵画などに用いられるようになりました。
 茶道でも茶室や床荘り、道具、点前など様々な「真」「行」「草」の格がありますが、今回はマナー教室で体験していただいた真行草の正座のお辞儀を取り上げます。
正座のお辞儀の基本として、背筋を曲げないように体を前に倒し、膝上の両手を指先から静かにおろします。両腕は大木を抱くような輪を作ることを意識し、腋が付きすぎたり、開きすぎないようにします。上体を起こすときは静かにゆっくり上げます。

◎真のお辞儀:
もっとも正式なお辞儀の仕方で、総礼や菓子、お茶を頂く時にします。掌が全部畳に付いて手の指はきれいに揃えます(頭だけ下がることないよう注意)。

◎行のお辞儀:
相客同士の軽い挨拶などの時にします。指先から第二関節ぐらいまでが自然に畳に付くように、膝から自然に指先からおろします(指先が反らないよう注意)。

◎草のお辞儀:
軽い会釈のようなお辞儀です。指先が畳に付くほどで、体を少し前に倒します。腕は大木を抱く姿を維持したまま、膝から自然に指先をおろします(手だけが真っ直ぐになっていたり、猫背にならないよう注意)。

 挨拶は、人と人との心が出合うものですから、いずれのお辞儀も人との呼吸を合わせることが大切です。相手を敬い、感謝する心が自然と体に出るように身に着けたいものです。
 私事ですが、学生時代に今は既に撤退した某百貨店で店員のアルバイトをしていました。そこには接客マニュアルがあり、お辞儀は背筋を伸ばし腰から上体を倒し、その角度は15度、30度、45度の3種類で状況に応じて使い分けるというものでした。おぼろげな記憶ですが、最初の「いらっしゃいませ」は30度、「少々お待ちくださいませ」は15度、最後の「ありがとうございました」は45度といった具合です。どこかで聞いた話ですよね?茶道は非日常的な空間と思われる方もいるかもしれませんが、実は学ぶことで日常での気づきを得ることも多いのではないかと思います。

20230910学び舎


参考
淡交テキスト『お稽古必携 亭主の学び・客の習い1』
コトバンク https://kotobank.jp/word/%E7%9C%9F%E8%A1%8C%E8%8D%89-536982
Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%9F%E8%A1%8C%E8%8D%89