No.79「洗い茶巾」
〜 連載 学び舎〜
No.79「洗い茶巾」
8月になり風炉になって3カ月が経ちました。今年は全国的に例年にない程の猛暑日が続き、北海道も避暑地とはいえないほどの暑さが続いています。
いくつかある季節の点前の一つに洗い茶巾があります。
洗い茶巾の古くは、瀬田掃部(かもん)の高麗茶碗の『さらし茶巾』から始まったとされ南方録に記述されますが、裏千家の13代円能斎が『洗い茶巾』として現代の点前に確立したものです。
◆洗い茶巾の点前のポイント◆
酷暑の頃に行う薄茶点前の趣向です。
ごく浅い平茶碗に、水を7分目ほど入れ、茶巾の端と端との対角線をとって、2つに折り、その端を茶碗の右方に少し出して、その上に茶筅を仕組み、茶杓をのせます。
平茶碗に水を入れ、茶巾をたたまずに流しておくことで視覚から涼を感じ、また茶碗から茶巾を水が流れるように少し高めにあげて取り出し、絞ること、そして茶碗から建水に滝のように流しいれる(捨てる)水の音で聴覚からも涼感を演出することが、洗い茶巾の醍醐味です。(建水は、水音が響くように瀬戸よりも唐金がよいそうです。)
◆瀬田掃部◆
『利休七哲』という千利休の高弟とされる7人の武将の1人として知られ、大きな平高麗茶碗や、後にその名をとって「掃部形」と称されることとなる大きな櫂先を持った茶杓を愛用しました。
利休は、大きな平高麗茶碗を持っていた瀬田掃部に暑い時の点前の工夫を考えてほしいとお願いをして、その大事にしている琵琶色の茶碗に水を張り、琵琶湖に見立てたそうです。そして、長く大きな茶杓を作り、琵琶湖に架かる大橋・唐橋と自分の瀬田をかけて銘を『勢多』として利休をもてなし感嘆されたそうです。
お茶席に運び入れるそのお茶碗の中に壮大な世界が広がっていることを思い浮かべながら、暑さの続くこの夏のお稽古を洗い茶巾のお点前で乗り切りたいと思います。
~参考資料~
●淡交社 裏千家茶道 点前教則⑲ 応用点前 趣向と工夫
●淡交社 四季折おり 茶の湯ごよみ 風炉の季節