No.7「すり足」
〜 連載 学び舎〜
No.7「すり足」
稽古の時よく師匠に注意をうけたのは茶席での歩き方で、「すり足」と言いよく歩いて見せてくださったものです。そののち研究会か何かでそれを、反閇(へんばい)という言葉で知ることとなりました。
反閇とは道教の歩行呪術が日本に伝来してそのように呼ばれるようになったもので陰陽道をはじめさまざまな儀礼や作法、あらゆる舞踊の基礎などに取り入れられています。
反閇の源流は、約四千年遡る中国の夏王朝の始祖・禹王の歩行法に辿り着くといわれ、父君が成し得なかった治水工事に奔走し、そのために足を痛め引きずるように歩いたことが由縁で反閇は禹歩(うほ)ともいわれています。
ただ中国では大地の霊に尊祟の念を表す表現が儀礼化したものとされており、神道儀式などで邪気祓いなどの清めや鎮めのための歩行法になったのはもっぱら日本に伝来してからになります。 そこから「すり足」ということばがいつ頃から使われ始めたのは定かではないそうですが、特に「能」に於いて日本独自の発展があり、能のステージ(舞台)が、芝 ⇒ 盛り土に載せた板 ⇒檜舞台 と変化するにつれすり足の技術も洗練され複雑になり、今では剣道、柔道をはじめ、茶道日本舞踊に至るまで、和の動作の基本となっています。
そのすり足ですが・・じつは深層筋を鍛えるのにとても効果的だそうです。
かつては稽古場でしっとりと歩いて見せてくださった師匠も年月とともに思うように歩けなくなってしまいましたが、高齢でも元気でいてくださるのもこのような積み重ねなのかもしれません。
能楽師の方のいうすり足のイラストがありましたので転載させていただきました。美しく歩きストレッチもできるとはなんと一石二鳥。皆様ぜひお試しあれ。
【参考・引用文献】
*陰陽五行と文化
*能に見る日本人の文化「すり足」
*疲れない体をつくる「和」の身体作法 安田 登著