No.37「水無月(みなづき)」
〜 連載 学び舎〜
No.37「水無月(みなづき)」
氷に見立てた白いういろうの上に甘く煮た小豆をぎっしり乗せて、三角形に切りわけた京都発祥のお菓子。
6月を代表するお菓子ともいえる「水無月」ですが、そもそも発祥地である京都では「夏越の祓(なごしのはらい)」が行われる6月30日に食べるお菓子だったそうです。
「夏越の祓」とは、神官が祓の式を行なうのですが、この日、各神社には茅で作った大きな輪がかけられ、参拝者はこれをくぐると穢れを祓うことができるといわれているそうです。
その日に何故、氷に見立てた水無月を口にするようになったのかの理由の一つに「氷室の節句」または「氷の節句」(以下「氷室の節句」)といわれた宮廷行事に由縁があるようです。
その昔、京都の北山にある氷室(ひむろ)という土地に、冬の間に張った氷や雪を固めて貯蔵する氷の室がありました。
平安時代、旧暦の6月1日に氷を口にすると夏バテしないとの言い伝えから、この日に氷室から切り出された氷は御所へ献上され、公家たちにも配られました。
これを「氷室の節句」といい、宮廷だけで行なわれていた暑気払いの行事だそうです。
しかしながら、当然、氷は大変貴重なものでしたから、一般大衆が口にすることはできませんでした。
庶民の氷への憧れが、氷片に見立てた三角形の水無月を生みだしたそうです。
また一方では、小豆の赤い色には厄除けの意味があるとされ、四角を半分にした形(三角形)は1年の半分を示しているともいわれているそうです。
このことから1年の半分が過ぎた六月晦日(「夏越の祓」)に「水無月」を食べて穢れを祓い、残り半年の無病・息災を祈念するようになったともいわれているようです。
参考図書:京菓子歳時記、茶の湯お稽古必携6月、
和・洋・中・エスニック世界の料理がわかる辞典