No.57「薄茶器」
〜 連載 学び舎〜
No.57「薄茶器」
薄茶器とは、皆さんご存知の通り薄茶に使う抹茶を入れる器を言います。代表的なのは棗で、お稽古でもよく使われているのではないでしょうか。
薄茶が始められたころは陶器が高級品だったため、茶入れの代わりに漆塗りの薄茶器が作られるようになりました。塗物がとても庶民的であった事からも薄茶が本来、気軽にできるお茶だったことが伺えます。それは現在でも変わっていないように思われます。
最後に、薄茶器のベスト集とも言える仙叟が選んだ「仙叟十二器」を紹介します。
仙叟十二器
大棗・・・利休が好んだ棗のなかでもっともサイズの大きいもの。中棗より一回り大きい。
中棗・・・大きさ、形ともに基本となる棗。
小棗・・・中棗とほぼ同じ形状でひとまわり小さい棗。
鷲棗・・・利休が切腹に向かう際に懐に忍ばせたという鷲棗。
一服入棗・・・一人用の最も小さい棗。
平棗・・・横幅に比べて高さを低くした棗。
碁笥棗・・・碁石を入れる碁笥(ごけ)を模した棗。宗旦の好み。
茶合棗・・・抹茶用計量器である茶合を模した棗。
尻張棗・・・上部より下部が膨らんでいる棗。
面中次・・・上部の角を面取りした中次。
茶桶・・・茶桶を模したもので、面中次よりも蓋が浅い。
再来棗・・・一度紛失した利休所持の黒棗が再び仙叟が手に入れたことから名づけられた棗。
参考文献:
・『茶の湯のデザイン』 木村宗慎監修 (阪急コミュニケーションズ)