No.21「茶の湯の香り」
〜 連載 学び舎〜
No.21「茶の湯の香り」
茶道は五感をとぎすませると様々な感覚で味わうことができます。その五感の中の一つである嗅覚。
現代では、化学物質によって様々な香りが楽しめます。そして香りを残すことが流行となりいつまでもその香りを持続されるような製品も多く出ています。そのため日常生活の中では化学物質によって作られた香りによって、自然の香りが感じにくくなってしまっているものもあります。
しかし、そのような生活の中でも、茶室の中では様々な香りを感じることができます。花、お抹茶、畳、水、お日様・・・、そしてお香。
今回は「お香の香り」についてふれてみたいと思います。
~香の歴史~
日本で「香」が用いられるようになったのは、飛鳥時代に仏教伝来の頃と考えられています。奈良時代は主に仏前を清め、邪気を払う「供香」として用いられ、宗教的な意味合いが強いものでしたが、のちに仏のための供香だけではなく、貴族たちは日常生活の中でも香りを楽しむようになりました。江戸時代には貴族、武士階級の他に経済力を持った町人にも香文化が広まり、中国からのお線香の製造技法が伝わってきたことによって庶民のあいだにもお線香が浸透していきました。
~香の原料~
材料そのものに芳香を有する木を、香木といいます。代表的なものとして「沈香」「伽羅」「白檀」があります。
一方、お香の原料として使用される天然香料には数十種類あります。代表的なものとして「桂皮」「乳香」「竜脳」「山奈」「貝香」「大茴香」「安息香」「丁子」などがあり、樹脂や樹皮、果実、根茎、花蕾など様々なものがあります。その中には香辛料や漢方薬として親しまれているものも多くあります。
~香の種類~
お香にはいろいろな種類があります。目的によって様々な香りを使い分けることができます。
「直接火をつけるお香」(お線香・スティックタイプ)(渦巻型)(円錐型)
「常温で自然に香るお香」(匂い袋)
「間接的に熱を加えるお香」(印香)(香木)(練香)
私たち茶人の馴染みがあるものは間接的に熱を加えるお香ですね。練香体験をなさったことがある方も多いのではないでしょうか。練香を作る際には、さじ加減によって香りは変わってきます。皆さんがほっとする香りはどのような香りでしょうか。自分好みの香りでお茶をいっぷくいただいてはいかがでしょうか。