No.54「香合」
〜 連載 学び舎〜
No.54「香合」
香合は、炭手前をするときに使う香を入れておく容器のことである。多くの茶会では、炭手前が省略されているため、紙釜敷の上に置かれ、床の間に飾られている。
床の間に飾られるということは、季節の花や花入れ、軸と一緒に飾られるということであり、亭主の趣向が反映され、鑑賞の対象となる。また、香合の中にある香には、香りを楽しみ、さらに清浄感を与える役割を担っている。
香合の使用には季節の決まりがあり、炉の時期である11月~4月までは陶製の香合に練香を入れて用いている。また、風炉の時期の5月~10月には漆器製を使用し、角割の香木を用いている。そして、金属製や貝殻を使用した香合については、季節を問わず使用することができる。
そんな香合の歴史も不透明なところが多い。香は、仏教の伝来とともに伝わったことが分かっており、香合についても同時期に伝わったとの解釈がある。また、茶と香合の関わりでは、南北朝時代に書かれた「喫茶往来」で確認できる。また、16世紀ごろの「松屋会記」や「宗湛日記」の記録より、茶会で香合が使用されていることが確認できており、その後、茶道具として定着していったことが確認できている。茶道に取り入れられた当初は、唐物の香合が使用されており、その後、桃山時代から陶磁器のものが用いられ、備前や伊賀、信楽などの各地で茶の湯専用に香合が作られるようになったと言われている。そこから、色や形が様々な香合が作られるようになった。
香合1つを取り合わせるにしても、軸、花、花入れとの組み合わせがあり、その茶会のテーマが反映される道具である。茶室の空間を考えると、香合の占めている部分は、ほんのわずかである。しかし、そこに亭主の趣向、テーマ、伝えたいことが凝縮されていることを考えると、とても存在感のある道具の1つとなる。これまで様々な茶会を経験させていただいたが、同じ香合は見たことがなく、香合について調べるうちに、次の茶会ではどんな香合を拝見できるか楽しみとなった。ぜひ、皆さんにも小さいながら、大きな役割を持つ香合を楽しんでいただきたい。
参照元:
裏千家ホームページ 茶道具入門 (urasenke.or.jp)
香合 - Wikipedia
茶道具「香合」について、歴史や特徴、扱い方や保管方法まで徹底解説 (xn--eckp2gv22ot7an06opgmyj0a.com)
香合 | 裏千家今日庵出入方 御茶道具商 髙野至宝堂 (takano-sihoudo.com)