No.73 「茶杓」
〜 連載 学び舎〜
No.73 「茶杓 」
お稽古をしていない人に茶杓を説明する場合、「茶道具の一つで、抹茶をすくって茶碗に入れるための匙のこと」みたいな説明をすると思うのですが、皆さまいかがでしょう。言葉にすると何とも味気ないものですが、茶杓は形も素材も色々あり、銘も持っていたりするので、コレクターは結構いるのではないでしょうか。また、古くは茶事・茶会のたびに作る物だったこともあり、自作や青年部活動で作ったりした方も多いのではと思います。
茶杓と言われてほとんどの人が思い浮かべるのが、竹で中央に節がある中節の物ではないですか?この中節の茶杓がメジャーになるまでを簡単に振り返ってみます。
茶杓のルーツは薬匙なので、元々は毒によって色が変わる象牙や銀のものが使われていました。村田珠光の時代になるとそれらの代わりに竹が使われるようになります。けれど、この時代のものには節がありません。まだ、竹を素材として用いているだけなのです。その後、千利休が節という竹の特徴を生かした茶杓を作ります。ここでやっと私たちの知る中節の茶杓が登場します。この竹の茶杓は茶人が自ら削り、様々な景色を作り出し、銘を付けることができます。その為、掛け軸と同じように茶会の世界観を表現する道具として使うことができるのです。
最後に二つ個性的な茶杓を紹介します。一つ目は当代中村宗哲の「七星」茶杓。竹を折り曲げて北斗七星の形をしたものです。二つ目は当代大西清右衛門の「南鐐」茶杓。金属が持つ重さを軽減するために抹茶をすくう先端部以外の芯を抜いています。どちらも見た目が面白く画像を載せたかったのですが、掲載は難しそうですので、皆さま是非ネットで検索をしてみてください。
参考文献:『茶の湯のデザイン』 木村宗慎監修 (阪急コミュニケーションズ)