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No.16「茶銘(○○の昔・○○の白)」

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〜 連載 学び舎〜

No.16「茶銘(○○の昔・○○の白)」



 抹茶には銘があります。
おめでたいもの、雅なもの、普段は耳にすることのない言葉や美しい響きのものがたくさんあり、茶銘一つから、味、意味、由来、込められた思い等々を感じることができます。
しかし、茶銘に趣向を凝らし楽しむようになったのは江戸時代に入ってからのようです。
そもそも茶銘の始まりは、茶師が摘み取られた新芽を茶園ごとに区別するため、また、茶壺の中の一つひとつの袋茶に付していた分類記号であり目印にすぎなかったといいます。
それがいつしか茶人たちの目に留まり、茶の湯の中に一つの景色を添えるものになっていったのです。

そこで気になるのは、「○○の昔」と「○○の白」です。
全てに該当するわけではありませんが、一般に○○の昔=濃茶の銘、○○の白=薄茶の銘とイメージするのではないでしょうか?
現在では、「昔」のほうが「白」よりも上位に位置づけられていますが、初めから格付
けされていたものではないようです。
では、なぜ茶銘の末尾に「昔」と「白」が使われるのでしょう。

「昔」の語~「廿日(はつか)」の文字を合わせたもの
      最上級の茶の初摘の日である旧暦三月廿日にちなむと説くことがある
      ※廿~二十を表す漢字(十が2つくっついている状態)

「白」の語~三代将軍家光時代に茶に通じた大名がさかんに「茶を白く」と宇治茶師に求めたことがきっかけとある
ただし、その当時の白がどんな状態をさすのかは不明

上述したように旧暦三月にお茶を摘むことは時期的に早いとも思われますが、江戸時代
以前に三月に茶摘みの記事を見ることができ、もっとも早くに芽吹いた新芽を摘むこと
が吉例であったとすることから、茶銘に「昔」の語を用いたのではないかとされていま
す。
このように、かなり古い時代から活用されていた伝統ある「昔」という語に対して、江
戸時代に入ってから表現されるようになった「白」の語を、後世の茶人たちが濃茶と薄
茶の品格の差に置き換えて通用させたとするのが適当と思われるとのことです。

なお、古田織部が青茶を好んだのに対し、織部の後に御茶吟味役となった小堀遠州は白
茶を好んだとする逸話が遺されているそうです。
青茶と白茶の違いを宇治では茶葉の蒸し加減によると説明するそうですが、有名な茶人
でもある織部と遠州の二人を引き合いにだした逸話は、嗜好の移り変わりを言い換えた
ものとみることができるとありました。

この他にも「昔」と「白」に由来に関しては諸説あるようですが、何げなく口にしてい
る○○の昔、○○の白という茶銘ですが、時代の大きな変化や流れが反映されている
のかもしれません。

     
織部古田重然(織部)像      







     
小堀頼久寺所蔵『小堀遠州像』

参考図書:茶道文化検定公式テキスト
肖像画 :ウィキペディアより