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No.86 「看脚下」

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〜 連載 学び舎〜

No.86 「看脚下」


 6月末に開催される全国行事『青年茶人・京都のつどい』。目的のひとつに他ブロックの青年部会員との交流があります。交流のツールとして自己紹介カードを作成することになり、そのテンプレートには「信念」という文字が。恥ずかしながらそんな大層なものはないわ・・・と悩んでいたところにふっと思い出されたのが「看脚下」という言葉でした。
禅語ですのでお稽古で目にしている方も多いかもしれませんが、私が初めてこの言葉を認識したのはNC2018でした。敬史様と能楽金剛流の金剛龍謹氏、樂家次期継嗣の樂篤人氏(いずれも2018年当時)による座談会の場で樂さんが仰いました。作陶で手慣れてくると自分の軸からずれてしまうので、そう感じたら自分を見つめ直す、というようなことを話されていた記憶があります。
「看脚下」についてもう少し説明をします。五祖法演(臨済宗中興の祖とされる)と弟子たちが寺へ帰る途中に灯火が尽き、辺り一面真っ暗となりました。法演が弟子たちにこの暗闇で得た心境を問うたところ、弟子のひとりである圜悟克勤が看脚下と答えたというもの。これは、この暗闇を人生に置き換えた時どうするのか?と問われ、足元に気を付けること、と答えたともいえます。理想を追い求めると遠くに目が行きがちですが、一番大切なことは「今何をなすべきか」であり、足元にある真実を見落とさないように気を付けよう、自分自身を深く見つめ直そうという戒めとも考えられます。
仕事などでマルチタスクに追われる、または目標に向かってまっしぐら・・・でもうまく進まなくなった場合、この言葉を思い出し、まず何をするべきか足元に戻って考えると前進する糸口に気付くかもしれません。
・・・と調べながら、よし、これを心して日々を過ごそう、と思ったのでした。

参考文献
『その禅語、決まった時だけ掛けていませんか』岩﨑宗瑞 著 淡交社
『必携茶席の禅語ハンドブック』有馬賴底 著 里文出版
『充実 茶掛の禅語辞典』有馬賴底 監修 淡交社

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