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No.229 「利休さんの失敗」

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〜コラム 〜

No.229 「利休さんの失敗」


先日、淡交社さんから出ている「利休大事典」という本を手に入れました。
辞書みたいに分厚い本で、ゆっくり読み進めていこうと思っています。
その本の中に、利休さんが失敗したエピソードが記されていました。
こんなエピソードです。

その日、利休さんは前田利家ら弟子の4人と有名な「円悟の墨蹟」を見せてもらうため
その所有者の茶事に行く約束をしていたそうです。
ところが、同じ日に豊臣秀次の御前に全員が呼び出されてしまいます。
なかなか帰れず時間が経ってしまいました。
利休さんは亭主方へ使いを出し、
「秀次様の用事が済まず、間に合いませんのでどうかご判断下さい。
 懐石のご用意されなくて構いません」
というような事を伝えました。
相手からは
「仕方ない事ですから、御用の済み次第お越しください」
との返事がきます。

やっと用事が済み一同が茶事へやって来た頃には日もとっぷり暮れていたそうです。
亭主は手燭を座中に出し火を灯します。
利休さん達はやっと念願の「円悟の墨蹟」を拝見することができます。
暗い室内で利休さんは弟子達にも墨蹟を見せようと
「手燭を持ってよく見てみなさい」と薦めました。

すると亭主は茶道口の襖を開けて利休さんに
「いっそ墨蹟もお焼き捨て下さい」
と皮肉を言ったそうです。
これには利休さんも面目を失ってしまったというお話です。

利休さんは念願の墨蹟を見れる嬉しさのあまり、大切な墨蹟に火を近づけ、
亭主への心配りや道具への配慮を欠いてしまったという失敗談でした。

利休さんの良いところだけではなく、失敗した事も書かれているところが
人間味が感じられて面白いですよね。

気分が上がって失敗してしまうことは誰にでもあることなので
気をつけましょうという教訓ですね。

今年も初釜を終えお稽古が始まりました。
気を引き締めていこうと思います。

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