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No.223 「使い方」

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〜コラム 〜

No.223 「使い方」



 技術が高度に発達した現在の世界において、「誰でも」「簡単に」「上手に」使える道具や製品が増えてきました。AIやコンピューターの補佐によって、初めての人でも不便なく使う事が出来るということはすごいことだと感じます。しかし、言い換えてみれば「誰でも」「簡単に」「同じように」使えると言えるのではないでしょうか。これを良いと捉えるか否かは難しいところです。

 皆さんはお寺に有る「鐘」を見た事が有りますでしょうか?種類にもよりますが、良く見ると鐘の外縁部のある部分だけに小さな印が彫られているものが有ります。この刻印は、鐘の製作者が「ここを打つと一番良い音がするので、ここを打つように」という事を伝える為の印だとも言われています。
しかし誰でもここを打てば良い音が鳴るわけではありません。そこには打つ「力の加減」や「角度」「余韻」などを実際に自分が打った手ごたえ、そして音を耳で聞いて確認しながら積み上げていく「錬度」が必要になってきます。
本来「道具を使う」ということは自分が道具に合せて使いこなすという事が必要だったのではないでしょうか?
そこから私達は物を上手に使えた時の「満足感」や、「充実感」を得ていたはずです。そしてそこに、その人にしか出せない個性が生れるからこそ、私達は「美しさ」や「感動」を感じ、初めてその道具の持つ「一番良い姿」を見る事が出来るのかもしれません。

 何の道具であれ「上手に使いたい」と思う心が、これからも人の心に響く世の中であってもらいたいと願います。

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