No.94「抹茶について」

〜 連載 学び舎〜
No.94「抹茶について」
抹茶の起源は中国、唐の時代に茶葉を粉にして飲む「粉茶」が存在しておりました。これが日本に伝わって茶道の一部として発展し独自の製法や文化を築いていきました。抹茶が本格的に広まったのは、室町時代からで特に千利休によって茶道が現在の形に近づいたことで、抹茶も重要な役割を担うようになりました。その後、江戸時代にかけて抹茶は庶民の間でも普及し現在に至るまで日本文化を象徴する飲み物として愛され続けています。抹茶の製法について、主に「栽培」「収穫」「加工」「製粉」の4つの段階を紹介します。
(1)栽培
抹茶を作るために使用するのは、「茶樹」から採れた茶葉で「碾茶(てんちゃ)」と呼ばれる特別な茶葉です。碾茶は収穫前に日光を遮ることで旨み成分を豊富に含み、苦みが少ないのが特徴です。抹茶用の茶葉は、覆下栽培遮光栽培と呼ばれる方法で育てられます。茶樹を数週間から一ヶ月ほど直射日光を避けるように覆うことで茶葉の渋み成分が減少し、うまみ成分が増加します。
(2)収穫
茶葉は主に春に収穫され新芽のみを手摘みで丁寧に収穫するため非常に手間がかかり、茶葉が傷つかないように慎重に行われます。
(3)加工
収穫された茶葉は、まず蒸されて青茶として加工されます。これにより茶葉が発酵せず、鮮やかな緑色が保持されます。その後、茶葉は乾燥され、「碾茶」と呼ばれる状態になります。収穫した茶葉を蒸気で数十秒蒸すことで、茶葉の酸化酵素を失活させ、鮮やかな緑色を保ちます。
(4)製粉
抹茶の特徴的な製法の一つは、粉にする工程で碾茶を石臼で丁寧に挽いて、細かい粉末にします。石臼は低速で回転し、摩擦熱が発生しないように注意しながら挽かれます。これにより香りが損なわれることなくまろやかで豊かな風味の抹茶が完成します。
このように非常に手間暇をかけて作られる抹茶ですが近年、外国の方の抹茶ブームを耳にします。実際わたしも京都の祇園辻利にお邪魔した際に外国の方が抹茶を購入している光景を目にしました。日本文化の魅力や健康志向だけでなく環境負荷が少ないことが人気の理由になっていると思われます。
茶人として改めて抹茶について学び、生産者の方々に感謝して修練していきたいものです。