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No.13「耳をすませば」

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〜 連載 学び舎〜

No.13「耳をすませば」




IMG_5550一般には、茶道は静寂の中で行われる堅苦しいものというイメージを持たれる人が多いとおもいます。
しかし、完全な無音というものではなく、むしろ『音』がとても大事な役割を果たしているという事は皆さんもご存じでしょう。
茶道で『音』といえば皆さんが思い浮かぶのは、釜の音ではないでしょうか。
よく聞くのが「松風」
釜の湯の煮える音には「釜の六音」という形容があります。
「魚眼」「蚯音」「岸波」「遠波」「松風」「無音」と言われています。
利休さんは
「蚯音」「蟹眼」「連珠」「魚目」「松風」と五つに分け「松風」がお茶に一番良いとしました。ですから皆さんが一番知っている釜の音が「松風」なのでしょう。
釜の鳴りが良いとお茶がいっそう美味しく感じられますね。

茶席で鳴っているのは釜の音だけではありません。
襖が開く音を聞くと、始まりを感じます。
亭主の足運びによって厳かな足音が聞こえてきます。
柄杓が蓋置きに乗るコツんという音。
亭主が居ずまいを正し、ひと呼吸の後の静寂。
柄杓からお湯が茶碗に落ちる音。
茶筅が茶碗に触れる音。
建水にお湯が落ちる音。
釜のお湯にお水をひと杓入れると、煮えたお湯がそっと大人しくなります。
柄杓からお水が茶碗に落ちる音と、お湯の音との違いは皆さんお分かりになりますか。
音を出すのは亭主だけではありません。
お客は頂いた抹茶を小気味好く吸い切ります、亭主はその音を聞いて安心するでしょう。
亭主は席から退出しても中の音に耳を傾けています。
皆さんも経験があることでしょう、拝見のお道具が戻り、正客が席に着くまで、障子の裏で席中の足音に意識を集中させていることは。

まだまだ色々な音が茶席では聞くことができます。
しかし、その「音」は決して「大きな音」ではありません。
「静寂の中で耳を澄ましてやっと聞こえる音」なのではないでしょうか。

日々のお稽古の中で、「振る舞い」や「手続き」だけではなく、
「音」にも意識を向けてみるのも良いかもしれません。